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睡眠時無呼吸症候群について

 睡眠時無呼吸症候群は夜間眠っている間に呼吸が止まったり、弱くなったりする病気です。
 睡眠時無呼吸症候群には閉塞型と中枢型がありますが、大部分の方は閉塞型睡眠時無呼吸症候群で、中枢型はまれです。

  それでは、なぜ、夜間睡眠中に呼吸が止まるのでしょうか?

 まず第一に、この病気の方はなんらかの原因(肥満や顎顔面形態上の問題、扁桃腺肥大など)で上気道(空気の通り道)が狭いことが多いのです。

SAS 図1
◆呼吸調節が睡眠モードになると、上気道開大筋が弛緩し、無呼吸が起こる

 覚醒時(目覚めている間)は狭くなった上気道を、上気道開大筋群(上気道を開く筋肉)が支えているため、閉塞することはありません。眠ると呼吸を調節する脳幹の呼吸中枢も若干休息をとるため、上気道を開く筋肉の緊張が弱まるために上気道が閉塞し、窒息状態となります。この状態が無呼吸なのです
 無呼吸になると、息苦しさのため目がさめます。この目がさめること(覚醒)は脳波で検出できますが、患者さん自身にはほとんどわかりません。脳(呼吸中枢)が覚醒することによって、上気道を開く筋肉の活動により呼吸が再開します。こういったことが多い人では1晩に500回以上も繰り返されます。

症状

1.大きく不規則なイビキ

 呼吸状態の変化でイビキは変化します。呼吸が止まるといびきも消えます。
 繰り返す無呼吸による、大きく不規則なイビキが特徴です。

2.昼間の眠気

 無呼吸のたびに脳が目を醒ますため睡眠の質が低下します。そのため昼間の眠気・集中力の低下が生じ、本来の能力が発揮できなくなり、仕事・学習能率が低下し、また交通事故の危険が増加します。朝の頭重感、憂うつさを自覚される方もあります。結果として生活の質(QOL)が低下します

無呼吸が身体に及ぼす悪影響とは

 無呼吸のたびに繰り返される体内酸素の低下などが、心臓、脳など全身の血管に負担をかけます。その状態を年単位で放置することで、高血圧、心臓発作、脳卒中を誘発する結果となります。海外で重症の閉塞型睡眠時無呼吸症候群を治療せず放置した場合10年間で15~30%程度が死亡したと報告されています。
 またそれ以外に閉塞型睡眠時無呼吸症候群の患者さんは一般的に内臓型肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症など動脈硬化の危険因子を伴うことが多く、動脈硬化を起こしやすい状態にあります。最近このような病態は、メタボリック症候群と呼ばれています。この面からも生命の危険にさらされています。

 <<睡眠時無呼吸の警告信号>>
   ●イビキが激しく、不規則
   ●
昼間の眠気が強い
   ●朝、起床時に頭が重い
   ●
顎が小さい
   ●
扁桃腫大がある      など

検査法・診断法

1、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)

 睡眠時無呼吸症候群の確定診断のための検査で、夜間の検査のため入院が必要です。
 無呼吸の重症度(無呼吸の回数、持続時間、低酸素血症の程度)および無呼吸による睡眠の質の低下の程度が評価できる一番大切な検査です。
 呼吸障害の評価のため当院では最新の計測器を組み合わせ、より正確な睡眠中の呼吸状態の評価を行っております。

検査部屋 検査実施時の状態
      PSG検査 専用個室          検査実施時の状態

 

PSGの記録例

検査は、空調などの設備の整った個室を利用して行います。

 

多数の電極・センサーを装着しますが寝返りも可能です。

 

<実際のPSG記録例>
一夜の検査のデータを睡眠検査専任技師が
目視判定します。

 

2、夜間パルスオキシメトリー検査

パルスオキシメトリー検査

睡眠中の酸素飽和度と脈拍変動を測定メモリし、無呼吸の有無を推測します。

睡眠時無呼吸症候群のスクリーニングに有用です。

自宅で検査可能です。 

 

3、夜間気管音検査

夜間期間音検査

いびきの客観的評価が可能です。
自宅で検査可能です。
また、夜間パルスオキシメトリ-検査と併用することで睡眠時無呼吸症候群のスクリ-ニング検査、経過をみる検査としても有用です。

 睡眠時無呼吸症候群を疑われる患者様には、問診と自宅での検査(上記2・3)を行い、必要に応じ終夜睡眠ポリグラフ検査(上記1)に進み、診断していきます。
これらの検査は、治療の効果を評価する時にも行われます。

治療法

基本治療

体重減少

 肥満の人はやせましょう。
 肥満による上気道周囲の脂肪により上気道が狭められているため、無呼吸が起こりやすくなっています。
 減量により脂肪が減ると上気道が広くなり、無呼吸は起こりにくくなります。

CT1 CT2
              〈CT写真(咽頭部の断面)   矢印は上気道を示しています〉

 

無呼吸の誘因となるアルコール、睡眠剤をやめる

 睡眠中の空気の通り道を開く筋肉の弛緩をひどくするため。

睡眠中の体位の工夫

 終夜睡眠ポリグラフ検査は体位(身体のむき)がわかります。
 仰向けの時のみに無呼吸がおこる方では、うつぶせまたは横向けで寝ることが有効です。

耳鼻科治療

 ●扁桃腺・アデノイドの大きい方は、扁桃腺・アデノイドをとる手術が有効です。(上気道が広くなります。)
 ●鼻閉(鼻づまり)
   
鼻閉により無呼吸は悪化します
   そこで耳鼻科でアレルギー性鼻炎、蓄膿、鼻茸、鼻中隔わん曲などについての診察を受け、治療を受けることが大切です。
   鼻CPAP療法・口腔内歯科装具の治療を継続するためにも鼻閉の治療は大切です。

特殊治療

鼻CPAP療法

 夜間睡眠時に鼻マスクから加える空気の圧力によって、上気道の閉塞を防ぎ無呼吸の発生を防ぐ方法です。
最も確実で安全な治療法であり、うまくいけば装着翌日から朝起床時熟眠感が得られます。
海外の論文で死亡率を著明に減少できることが報告され有効性は確立されています。

CPAP原理

空気のつっかえ棒で窒息を防ぎ、自然な呼吸を可能にします。

 年々鼻CPAP療法の器具は進歩しています。
当院では患者様毎に適した最新の機器を提供させていただいております
使用状況、呼吸障害、空気のもれ等の情報が機器に記録され、その記録から患者様により適した鼻CPAP療法を受けていただけるよう努めています。また実際顔に触れるマスクは快適に継続していただくのに大切という考えにもとづき多種類用意しております。

CPAP装着風景 CPAP装置3
実際のCPAP装着風景 CPAP装置

 

《CPAPについて》

各メーカーのCPAPを用意し、患者様に応じて選択しています。当院ではすべてオートCPAPを処方しています。
オートCPAPは無呼吸・低呼吸などを自動的に検知し、呼吸障害が生じないように患者様の呼吸状態に合わせ圧力が自動的に変化するCPAPです。

また、必要に応じ各機種の加温加湿器(CPAPからの空気を加温加湿し、上気道が乾燥することによる影響を緩和します)も用意しています。
冬場空気の冷たさで困られる方、鼻・のどの乾燥する方に有効です。最近の加温加湿器には、結露防止の専用チューブがついているものもあります。

CPAP装置1 CPAP装置2
                   加温加湿器を付けた状態

 鼻CPAP療法を受ける場合は、保険診療の制度により毎月1回の診察が必要となります。
 来院時には、CPAPメモリー(SD)カードからデータを読み出し、使用状況、呼吸障害、空気のもれ等を確認しています。

内蔵データ読み出し2 内蔵データ読み出し1
                    CPAP内蔵データの読み出し

 顔に触れる鼻マスクは、快適に使用していただける様にいろいろな種類を用意しています。
一般的には鼻を覆うタイプが多いですが、鼻孔に差し込むタイプなどもそろえ、それぞれの患者様に合うマスクを選択しています。

各種マスク1 各種マスク2 各種マスク3
                             各種マスク

 

口腔内歯科装具

口腔内歯科装具

下顎が前に突き出るような構造のマウスピースを付けて寝ていただきます。
鼻CPAP療法より、簡便で治療の継続が容易です。
比較的軽症の睡眠時無呼吸症候群の方に有効です。

口腔内歯科装具の作成は、熟練した口腔外科医に紹介させて頂いています。
歯の悪い方、鼻閉の強い方、顎関節の悪い方には使用は困難です。

 

耳鼻科手術

 ●扁桃腺を摘出し、のどの奥が広くなるよう縫い縮める手術方法。
 ●口蓋垂(のどちんこ)を含む軟口蓋(のどの奥)を局所麻酔下で縮小する手術方法。
 ●アレルギー性鼻炎などによる鼻閉に対して、鼻の奥を薬やレーザー等の熱で広げる手術方法。

当センターでの治療の現状

  治療の必要な閉塞型睡眠時無呼吸症候群と診断後、無呼吸を防ぐための治療方法(鼻CPAP療法、口腔内歯科装具、まれに耳鼻科手術など)を患者様に応じて選択しています。その後は、選択した治療を継続していただけるようサポートをしています。
 睡眠時無呼吸症候群の患者様は肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙習慣を有する方が多く、動脈硬化を起こしやすい状態にあります。これら動脈硬化の危険因子を放置すると致命的となる脳卒中、心臓発作につながります。
当センターでは肥満をはじめ、これら生活習慣病も評価し、体重減量指導を中心に食事・運動・生活指導を行っています。
 睡眠時無呼吸症候群の治療と合わせ睡眠習慣を聞き取り、よい眠りを確保するための睡眠衛生(スリープヘルス)指導にも取り組んでいます。

 

その他

●小児でも扁桃肥大、アデノイド肥大により睡眠時無呼吸症候群をきたします症状としては、落ち着きのなさ、成長障害あるいは学習障害をきたします。当院では、小児科・耳鼻科と連携し、小児の睡眠呼吸障害の診療も行っております。
心疾患のある方では閉塞型睡眠時無呼吸症候群の合併が多いことが知られていますが、他の睡眠呼吸障害(チェーン・ストークス呼吸)を合併する場合があり、予後をより悪化させるとされています。当院ではチェーン・ストークス呼吸診療も行っています。
眠気の強い方では、睡眠時無呼吸症候群のほかにも原因はたくさんあります。十分な睡眠を確保しても日中の強い眠気をきたすナルコレプシーの診療も行っています。
●最近、話題になっているレム睡眠行動障害・むずむず脚症候群の診療も行っております。

 

 

 

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